星夜光、きみのメランコリー
「あのさ、」
ペラリとページがめくられて、真っ白なページが顔を出す。
「暇だから、絵描かない? 友達が帰ってくるまで時間あるんだよね。付き合ってよ」
「えっ? 絵? なに、なんの絵ですか?」
「なんでもいい。思いついたのを書き殴るやつ。さっきの落書き以上の落書きして遊ぼ」
目の前にシャープペンシルが置かれた。返却口のカウンターに置かれていたものだ。
一色くんの右手には、にーびーの鉛筆。彼のお友達。
「絵…、あたしが、ここに描いてもいーの?」
「ん? 別によくない? ただの紙じゃん」
不思議な顔をされた。一色くんにとっては、ちょっと高そうなスケッチブックも、あたしにとってのメモ帳と同じ。
「……」
ツヤツヤの紙。真っ白な世界。描いて欲しいと待っているスケッチブック。
…白だけは、心を読むのが難しい。細かい色をあまり感じない。白だけしかいない。唯一、あたしが心の中でも名前で呼んでいる色。
久しぶりの輝きに、右手がじんと痺れた。
…この前、あたしの中の血液が流れ出したのを思い出す。
「……彩田さん?」
「…!」
ハッとした。同時に、自分が目の前の白の世界に吸い込まれていたことに気がつく。
…いけない。しっかりしないと。一色くんは、ただ落書きをしようって言ってくれているだけなんだ。
持たされているのは、シャープペン。一色くんから見たら、白黒の世界。
「あっ…、ごめん、ボーっとしてた」
「…ふーん? つーか、彩田さんって左利きなんだね」
「…」
痺れていない方の指を出す。これなら、感覚がある。何もおかしいことはない。だって、本当に左も使えるんだもの。