きみだけに、この歌を歌うよ
「あれ?おーいっ、菜々ーっ!そんなところでぼーっと何やってんの?」
慌てて涙を拭って振り返ってみると、そこには親友の宮園梓(みやぞのあずさ)が立っていた。
「ひとりなの?今日は愁くんと一緒に帰るんじゃなかったの?」
「あっ……うん、今日はやっぱり帰れないって!」
笑顔の梓にむりやり笑みを返す。
頬が引きつってしまって、上手く笑えてないな、私…。
「え、そうなの?ってかどうしたの、菜々。なんか目が赤くない?」