きみだけに、この歌を歌うよ
アーモンド型の黒目がちの瞳が、じろじろと私の顔を見つめてる。
ぎく、と胸が動く。
「……泣いた?」
泣いていたこと、隠さなきゃ。
いくら親友でも、人前では決して泣きたくない私には知られたくないことだった。
「な……なな泣いてないよ?」
さすがは小学生のころからの親友……。
泣いていたこと、誤魔化せそうにないかも。
「あはははっ!……気のせい気のせーいっ!ほらほらっ、私めっちゃ笑ってるし?ご機嫌ルンルンだから泣いてないよーっ!」
だって……。
いまはまだ、フラレたってことを話す気分にはなれないし。
愁と別れたんだって、まだ信じられないんだもん…。
「愁くんとケンカでもした?」
梓の顔がぐっと近くなった。
セミロングの赤みのある明るい茶髪から、ふわっといい匂いが香ってくる。