きみだけに、この歌を歌うよ
「ひとりで海見て黄昏て、なーにやってんの?」
「愁こそ……。東堂くんと一緒になにしにきたの?」
「いや、東堂が相談にのってほしいことがあるっていうから。なんとなく、ここでならゆっくり話せるかなって」
「あぁ、なるほどね…」
ここなら人も少ないし。
ゆっくり話したいのなら、ぴったりの場所ではあると思う。
「って、本当はウソなんだけどな」
「え、ウソ?」
私のとなりに腰を下ろす愁を目で追った。
愁は砂の上に座り込むと、私の顔をじっと見てきた。
「とある噂を確かめようと思って。ここで九条とデートしてるって、マジ?」