きみだけに、この歌を歌うよ



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九条くんがまた歌ってくれると約束をしてくれて、はや数日が経った。



私の大嫌いな梅雨もようやく終わり。

そんな今日は強い日差しがジリジリと照りつけていて、うだるように暑い。

教室の窓の外でジィジィなくセミに負けず劣らず、今日も杏里ちゃんは朝から騒がしい。



「ねぇ愁、明日から夏休みじゃん?花火大会いくよね?ね、一緒にどう?」



私の後ろの席が、静かな日なんてないか。



「えー、花火大会?暑くね?家でアイス食ってる方がまだいいわ」



杏里ちゃんと愁の会話を聞いていると、去年の今頃のことを思いだした。



『愁、花火見ようよ?』

『え〜……花火ぃ?正直、ぜんぜん興味ないんだけど…』

『おねがい〜!愁と一緒に見たいなぁ』

『あ〜もう、わかったよ!んじゃ見よう』


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