きみだけに、この歌を歌うよ
「もしかして愁くんに誘われた?」
「ううん……誘われてないよ。愁は花火とか興味ないから」
去年は私のわがままで、一緒に見てくれただけのことだし。
ぼーっと花火を眺める横顔は、つまらなそうだった。
「なら頑張って九条くんを誘ってみたら?だって九条くん、来年のいまごろはもう転校しちゃっていないんでしょ?」
「……そうだねぇ」
「じゃあね、菜々。今日は私、美緒と一緒に帰る約束してるから」
梓はひらひらと手を振りながら、次々と教室から出ていくクラスメートに混ざり姿を消した。