きみだけに、この歌を歌うよ
「すごーいっ!九条くんの家、スカイバルコニーがあるんだね!」
「そうそう。つーかすげぇな、浜辺が人で埋めつくされてる」
花火が打ち上がる音と、賑やかな歓声のせいで九条くんの声が聞き取りにくい…。
「いいねぇ!そこからだと花火、よく見えるでしょー?」
歓声に私の声が消されないように、声をはりあげる。
「なにー?何言ってんのか聞こえねーっ!」
やっぱり、九条くんがいるスカイバルコニーと私の部屋がある2階までちょっと離れてるし…。
せっかく会えたのに、距離と雑音が邪魔をしてどうも会話ができそうにない。
「ごめーん!これでも声、出してるんだけどーっ!」
家の前にある防波堤に座ってる人たちが、大声をあげた私を振り返って見あげてきた。
なんだか……恥ずかしいな。