きみだけに、この歌を歌うよ
「ほんとにきれい……」
赤とか青とか、緑にピンク。
色とりどりの花火がひっきりなしに上がっていて、まるで夜空に花畑があるみたいだ。
去年もちょうどこの場所で、いまとまったく同じことを思っていたな。
「おーい、菜々」
窓から身をのりだすようにして、花火を眺めていると。
どこからともなく、九条くんの声が聞こえてきた。
「上だよ、上」
「ん?上……?」
声が聞こえる右上に見あげると、九条くんは2階の窓から顔を出す私の目線よりもずっと上にいた。
九条くんは3階のバルコニーから、見を乗り出すようにして私を見下ろしていた。