きみだけに、この歌を歌うよ



だけどそのときにはもう私の気持ちは、九条くんに向いていた。

愁の本当の気持ちを知ってしまっても、九条くんのことが好きだって気持ちは変わらなかった。



「ありがとう、愁。私を守ってくれて。私を好きでいてくれて。私と、出会ってくれて」

「うん……菜々も、俺のことを好きになってくれてありがとう。俺のそばにいてくれて、ありがとうな」



愁はニヤッと明るく笑って、右手をすっと差し出してきた。



「菜々の気持ちはわかったよ。それならせめて……これからは友達としていてくれるか?」



差し出された右手をぎゅっと握り返す。



「うんっ、もちろんだよ!」



握手を交わした瞬間、私と愁の恋の物語は終わった。

だけど私も愁も、お互いに笑顔だった。



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