きみだけに、この歌を歌うよ
九条くんがギターの弦を弾くと、騒がしい会場からピタリと声が消える。
静まりかえった広場にギターの悲しい旋律が、ぽろり、ぽろりと物悲しい雰囲気に変える。
「きみと出会えたこと、運命だと思ってた。でもそれは私の、勘違いだったんだと。きみの言葉で知った」
失恋した女の子の気持ちを現した悲しい歌。
九条くんの歌声もどこか悲しく聴こえる。
「わすれられない。きみの声、ぬくもり仕草や笑顔。わすれられない。大きな腕でだきしめられたこと」
鼻をすする音がちらほら聞こえはじめた。
九条くんの歌に感動して泣いている人が、何人もいるみたいだった。