神様修行はじめます! 其の五のその後
 切なさの混じった優しい表情で、彼はふわりと笑った。


「ならば、なんの悔いもない。僕は自分の持てる幸運のすべてを、君と共に生きる時間のために喜んで捧げるよ」


 綺麗すぎるほど綺麗な瞳が、爽やかな冷気と一緒に近づいてくる。


 そして、あたしは彼にキスされた。


 優しい優しい、唇を撫でるような愛し気なキスに、あたしの心が甘く疼く。


 切なくて、幸せで、苦しくて、溺れるような恋の波にさらわれてしまいそう……。


「天内君、僕の愛しいキミ」


「門川くん……」


「キミを想う気持ちが強すぎて、僕はどうにかなってしまいそうだよ」


「門川君、好き。大好き、門川君」


 小鳥が気持ちを確かめ合うみたいなキスの合間に、お互いの名前を呼び合う。


 繰り返すたびに甘さが増して、心が蕩けそうになった。


 何度も何度も求め合った唇がそっと離れて、お互いに赤く火照った顔を見つめ合い、微笑み合う。


「ほらほら、当主様。そろそろお仕事の時間ですけど?」


 おどけた口調でそう言うあたしに、門川君がうなずいた。


「そうだな。キミとずっとこうしていたいが、職務は粛々と果たさねばならない。本日の執務が終わったらまた会おう」


 そう言ってサッとお仕事モードに表情を切り替えた門川君が立ち上がり、縁側を歩いて行く。


 その姿が角を曲がって見えなくなるまで、あたしはジッと見送っていた。
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