神様修行はじめます! 其の五のその後
「しま子おぉぉ――――!」


 あたしは泣きながら、しま子にタックルするみたいに遠慮なくドーンと飛び込んでいった。


 しっかりと受け止めてくれる胸の感触がする。


 筋肉質で固くて、でも温かくて優しいこの感触をずっと待ち望んでいた。


 これはしま子の体温。そして心の温もりだ。


 思い出してくれてありがとう、とか。


 またこんな風に抱き合えて嬉しい、とか。


 あたしのせいでゴメンね、とか。


 信じていたよ、とか。


 大好きだよ、とか。


 言いたいことは山ほどあるのに、どれも声にならない。


 代わりに涙が水道みたいに流れて流れて、両目が燃えるように熱くて溶けそうだ。


 しま子にしがみ付きながらワーワー泣きじゃくっていたら、頭のてっぺんにビシャッと水が落ちてきた。


 見上げたら、しま子も泣いている。


 丸いひとつ目から、信じられないくらい大粒の涙がボタボタ流れ落ちて、雨みたいにあたしの顔を濡らした。


「う、うあ。うあぁ、ああぁ~……」


 赤ちゃんみたいにしゃくり上げる声。


 しま子は感激屋で優しいから、今までもよく泣くことがあった。


 でもこんなに激しく泣いてる姿は見たことがない。
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