君はヴィラン ―冷血男子は結婚に懐疑的―
デートしましょう
 KIST内、SaBAP本部は、いつもと変わりない様子だった。夜勤用の仮眠室で礼門が眠っているのと、今晩の夜勤交代要員で征治が不在である以外、特にいつもと異なる点は無い。

 二人欠けた状態で、朝のミーティングが始まった。

「昨晩は、特に動きは無かったようです」

 礼門が不在な時は、蘇芳がその場を取り仕切る事になっている。

「昨晩の調査数値、出します」

 素子が、昨晩、礼門がとりまとめていたのであろうデータをマッピングした画像を、プロジェクターに出している。

「……いつも通り、だね」

 由真が、ディスプレイを目で追いながら、言った。

 通常、魔獣出現時に変動する数値が、青い甲冑によって連れ去られたと思われる時間以降検出されていない。魔獣が発生しても、その数値は継続して検出される為、追跡が可能になる。

 しかし。

「既に浄化されて戻ってるって可能性は?」

 蘇芳が素子に尋ねた。

「……これだけでは、判断できませんね、検出システムそのものが、稼働実績が浅いので、検出に干渉してくるようなものがある可能性もありますから……」

 素子が答える。

「検出を阻害……、やっぱり『魔獣側』が組織立てて何かをするようになってる可能性が高いって事だね」

 蘇芳が、表情を固くして言った。

 これまで、魔獣はどちらかといえば自然発生的だった。発生頻度からもそうだった。動きについてもより動物的というか、明確な意志をもって動かず、隠れる事も無いため、対処は容易だった。

「だとすると、今までみたいにセンサーで網を張っているだけじゃダメって事だね」

 由真が言った。
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