桜の花の散る頃に





「桜は散る時こそ美しい……」

夜闇に沈んだ公園で男が一人、ぽつりと呟いた。

夜風に吹かれ、男の長く透き通った髪がフワッとなびいた。

男は、髪の毛に絡まった桜の花びらを手に取り、それからしばらく、じっと静かに眺めていた。









「本当にここを出ていくのか?」

「うん。今まで、ありがとう。」

「そうか……。でも、大丈夫なのか?正体がバレたりしたら、色々と大変じゃないのか?」

「大丈夫さ。なんとか、上手くやるから。」

そう言って男____花雨は薄く整ったピンク色の唇にゆっくりと弧を描いた。

もう一人の男___鎖月は、花雨を心配そうな目で見る。

花雨は、鎖月の手を取り「大丈夫だから。」ともう一度微笑を浮かべたまま言った。

鎖月は、何も言わなかった。
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