桜の花の散る頃に
それから数日後

花雨の居なくなった家で鎖月は寂しい時を過ごしていた。




一ヶ月前

まだ、桜の花がつぼみだった頃。

鎖月は、花雨と出会った。

一人で過ごすには無駄に広い大きな日本屋敷の庭に、花雨は倒れていた。

前日の、大雨の時からそこに居たのか、花雨の体は酷く冷え込んでいた。

とりあえず、俺は意識のない花雨を家に運んだ。

花雨は、熱があるようで雪のような白い肌が、頬だけが赤く染まっていて、とても綺麗だったのを覚えている。

その翌日、花雨は目を覚ました。

切れ長の目に黄金色の瞳がフルフルと怯えたようにこちらを見ていた。

俺は、花雨が怯えないように、そっと声をかけた。

「突然で驚いているんだろ?…すまない、君が俺の家の庭で倒れているものだから、何かあったのかと思って、運んできたんだ。」

そう言うと、花雨は小さく頷いた。

そこから俺たちの共同生活は始まったんだ。







日を重ねていく事に、どんどん花雨に惹かれていく。

どこか儚げで美しい花雨に、俺はいつしか相手が男だというのも忘れ、恋をしていたんだ。





_____それが、何故だろう。

その夢のような時間は、一瞬にして切り裂かれてしまった。

俺は花雨の正体を知ってしまったんだ。

俺は禁忌を侵した。

触れてはいけなかったのだ


花雨は次の日、家から出ていくと俺に言った。
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