恋し、挑みし、闘へ乙女
「でも、人間、ゆとりも大切よ。ミミは甘味が足りてないわね」
「私は基本辛党です!」

二人の言い合いが始まると同時にメールの着信音が鳴る。

「きっと綾鷹様からですよ。やはり乙女様の仰る通りです。私には甘味が足りないようです」

ミミがニシャリと笑う。



昨夜は散々だったわ、と乙女は綾鷹からのメールを見返しながら赤面する。
ミミの言う通り、メールは綾鷹からだった。それで思い切りミミにからかわれたのだ。

ん? 手に持つ携帯が震え始める。
そう言えば、と思い出す。あの後、ミミに着信を知られないようにマナーモードにしたのだ。

「――糸子様?」

表示された名前に乙女は首を傾げる。

「そりゃあ、連絡先は交換したけど……」

会がお開きになる頃、七人全員としたが、こんなに早く誰かから連絡がくるとは乙女は思ってもいなかった。一瞬躊躇するものの、すぐ電話に出る。

《桜小路乙女様ですか?》

間違いない。昨日聞いたばかりの糸子の声だった。

「はい。糸子様ですか?」
《あっ、はい。良かった。私、電話は苦手で……》

ホッと息を吐く声が聞こえる。

乙女もどちらかと言えば電話は苦手だ……というよりも、電話は要件を伝え聞く道具と思っているので、無駄話をするなら『会おう』になるのだ。
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