恋し、挑みし、闘へ乙女
「なるほど」と綾鷹が頷くと、「アッ、そう言えば」と店員がパチンと手を叩く。

「男が電話に向かって『噂が立てば破談になります』と……何! あの男、指輪のみならず、貴方たちを破局させようとしたの! お嬢さん、あんた何したんですか? こんなカッコイイ婚約者がいるのに!」

――どうして私が悪者になるわけ? 乙女はブルンブルンと激しく頭を振り、「何もしていません!」と否定する。

「もしかしたら、その電話の主『御前』が彼女のストーカーで、店に来た男に拐かしを依頼した……のでは?」

綾鷹がいけしゃあしゃあとまた嘘を言う。よくも次から次へデタラメが言えるものだと乙女は呆れる。

だが、そんな乙女の思いなどよそに、「なるほど! 推理とサスペンスですね」とよく分からない理由で店員は同意する。

彼女、かなりの推理マニアなのかも? 乙女の推理もあながち外れてはいなさそうだ。これで辛うじて乙女に対する誤解は解け、面目は保たれた。



「じゃあ、この“至極のクリームあんみつのセット”と“至極の栗と抹茶の金粉ふりかけパフェのセット”をお願いしようかな」

店員の話を一通り聞き終わると、綾鷹は早速メニューを見ながら、その中で一番高そうな品を選び注文した。

「まぁ、お目が高い! うちの甘味はどれも巷で評判なんです。その中でも“至極シリーズ”は最高素材で作っているんです」

ホクホク顔で店員が言う。
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