恋し、挑みし、闘へ乙女
「さっきも言ったが、奴は君を廃位のコマにしようとした。謀反者である恋愛小説作家との見合いだ。大スキャンダルだろ?」

謀反者……私が? 何てこと! しかし……文筆家の性だろうか、今までにない展開に乙女の胸は踊る。

「何をワクワクしている。下手をすると投獄されてもおかしくない状況だぞ!」
「えっ、投獄って……嘘っ、私が!」

言論は自由なはず、なのに……どうして?
理解できないというように乙女は頭を振り、綾鷹を睨む。

「出版社が! 黄桜編集長が! 何をしたというのですか? そりゃあ、編集長は男装が趣味だけど、ちょっと……いや、相当変な人だけど」

散々な言われようだな、と綾鷹はちょっと黄桜吹雪を気の毒に思う。

「でもそれだけで監視下! 投獄! 横暴だわ」
「それだけではない」

綾鷹が穏やかに言う。

「黄桜吹雪は反婚ピュータ軍団のリーダーだ」

乙女の険しい顔がキョトンとする。

「――反婚ピュータ軍団……て何?」

乙女の反応に綾鷹は満足そうに頷く。

「どうやら、君は関わっていないようだね。よかったよ、未来の妻がメンバーの一員でなくて」

そして、顔を引き締め言う。

「君は軍団に利用された。弁護士を雇って被害届を出すかい?」

利用? 未来の妻というフレーズに少し引っかかりを覚える乙女だが、今はそれを横に置き、「ちょっと待って下さい」と慌てて綾鷹の言葉を遮る。
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