つちかぶりひめ
結婚相手がいなくなったことで忙しかった日々も、時間が経つにつれ落ち着いてきた。
そんなある夜、さくが寝ようと部屋へ向かうと外から物音が聞こえる。
何事かと外を覗こうと襖を開けると、そのまま何者かに体を押された。
「ひゃぁっ!」
いきなり前から押され、尻餅を突くさくの頭の両脇に、覆い被さるようにして両手をつく人影。その顔を見れば、見知った人物だった。
「十夜様!こんな夜更けにどうしたの?」
「どうしたのって、君は…」
久しぶりの十夜に嬉しそうに笑顔になるさくに、十夜は顔をしかめる。
「私が言うのもなんだけど、警戒心とか注意力をどこに捨ててきたの」
「?だって十夜様だし、なんにも怖いことはしないでしょう??」
何故そんなものが必要なのか、純粋に尋ねてくるさくに毒気を抜かれた十夜は、いそいそとさくの上から退き、腕を引くとさくを座らせた。
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