つちかぶりひめ



「あっ、顔が…」


気軽に顔を見せてはいけないというしきたりに、慌てて御簾の向こうへと行こうとするさくを十夜は腕を掴んで引き止める。


「今さらだし、この方がお互い表情が分かる」


「…う、んわかった」


十夜の真剣な眼差しに得も言わせない威圧を感じたさくは、そのまますとんと座り直した。



「で、この様子だと結婚はしてないんだ」


「…そうなの。結婚していたとしたら、今の状況はとっても良くないわ」


結婚してたとしたら、寝所に別の殿方がいるなど完全に浮気となってしまう。


「急にごめんね。けどなんとか抜け出してこれたんだ。今回は大目にみてくれると助かる」



バツの悪そうな顔をする十夜に、さくは面白くなってクスクスと笑った。



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