【完】はじめての…



そう、1年前の5年生。



木田翔太は転校生だった。



5年生で転校生とはめずらしいなと


思っていたが


実は最悪な日々が始まることを



わたしは知らなかった。




木田は、基本めんどくさがりやで


掃除はサボるは


授業は寝るか、男子と話すか…



とにかく、わたしにとっては嫌な

存在でしかなかった。


体育の時間、男子と女子は


着替えを別にするのに、


教室で男子が、更衣室で女子が着替えた。


着替えが終わり、

わたしは持ってきた縄跳びを

教室に置いてきたのを思い出して

急いで教室まで走って

取りに行くと木田が出てきた。



「なんだよ、お前。」


「縄跳び取りたいんだけど…」


なんで取るだけなのに、

こんなにも怒られるのよ…


「あー縄跳びね…

じゃあ取ってみれば?

男子まだ着替えてるけど?」

と上から目線で言ってきた。


「な、なんで、着替えてる

ところなんか…。

っていうか、15分も経ってたら

着替え終わってるでしょ…!」


と言うものの


何かたくらんでそうな笑顔で


木田はそこに留まるだけだった。



「じ、じゃあ縄跳び、木田が取ってよ。

わたしの席にかかってるから、

分かるよね?」


「ふーん。

それが人に物を頼む態度かよ?


それにお前なんかの物に頼まれたって

触りたくねーからな!」




え。



今なんて…




あぜんとしていると、



キーンコーンカーンコーン



チャイムが鳴って、


「まぁ開けるならやってみるんだな〜」

と木田は言って階段を降りていった。




どうしよう…

チャイムも鳴っちゃったし…

でも…!と意を決して


コンコンとノックして


おそるおそる扉を開くと



教室は誰もいなかった。




ひとまず、遅れちゃうと思いながら

席にかかった縄跳びを取ってから

教室を出てグラウンドに出るまで


さっきの木田の言葉を

ずっと考えていた。


触りたくない…って。

わたし何かしたの…?







よくよく過ごしてみると


手を洗わなかったりするときに


他人になすりつけるような


ばいきん行為があった。



5年にもなれば、

だいたいの男子も女子も慣れているが


この頃から、

男子とは全くしゃべらなくなり、


むしろ木田とコソコソ話を

わたしを見てするようになった。


次第に、女子すらも話しても

一言くらいで


避けられるようになった。



遊びに誘われなくなり

教室で過ごすと

誰かに笑われてるような、

からかわれているような、

そんな気がして、

その分居場所がなくなって、

図書室に行くようになった。


春菜や、翔はクラスが違ったから

今まで通り変わらずに過ごせた。


でも、中学のことを考えたら、



小学校の持ち上がりであるから


そんな人たちと一緒になんて…!



そんな思いがあって、

お母さんとも話し

中学受験することを決めた。



最初は小学校よりも家に近い中学校は

行くものだと思ってたから、

最初は嫌だったけど、

それよりも、

もうこんな生活したくないという

思いの方が強かった。


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