俺様社長に甘く奪われました
「二階建て構造にしては、それを支えるための支柱が少ないように見えますが」
「それでしたら、間口となる左右方向に二階床を支える室内柱を七メートルごとに三ヶ所設けた構造となっております」
手元の資料を見せながら、現場責任者が質問をした望月に説明をする。
「その程度で間に合うものですか」
「構造学上は問題ありません。また、二階床は軽量素材としましたので十分に支えられると考えます」
「屋根材はどうなっていますか?」
「二重葺き屋根構造となっておりまして、水密性・高断熱性共に非常に優れた屋根システムを採用いたしました」
望月はその後も壁の素材や床材に関する質問を続け、現場責任者に熱心に確認を重ねていく。
正直言って莉々子は、社長である望月がそこまで突っ込んだ話に触れるとは思っておらず、その真摯な姿勢に驚かされ、また眩しくもあった。
それは木村も同様で、「さすが社長ですね」と隣で唸る。
「一昨年のインドの工業団地プロジェクトの成功も、社長あってのものでしたからね」
望月に尊敬の眼差しを向ける木村は、どこか誇らしそうにも見えた。