俺様社長に甘く奪われました

 インドの工業団地プロジェクトとは、インドの大手財閥と共同で開発、運営を始めたもの。入居企業への管理・運営サービスは高評価を得ており、インド政府から最優秀工業団地賞を受賞した経歴もある。国内消費者市場の旺盛な需要が見込まれるインドで、工業団地開発への期待が高まっており、朝ソリはそれにみごとに応えた形だ。

 莉々子たちが望月一行を遠巻きに眺めていたときだった。不意に望月の視線が莉々子たちに向けられ、その瞳が一瞬見開かれる。現場担当に「ちょっと失礼」とひと言断った彼が、莉々子たちのほうへ歩いてきた。


「社長、お疲れさまです」


 先陣を切って挨拶をした木村に続いて、莉々子と志乃も「お疲れさまです」と頭を下げる。


「お疲れさま。今日は?」


 望月がざっと三人を見て、木村のところで目を止めた。


「私どもは、二週間後に迫った落成式の会場の下見で参りました」
「そうですか」
「社長もお忙しいところ遠くまで大変ですね」
「いえ、アビーへの引き渡しの前に入念なチェックは必須ですから」

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