俺様社長に甘く奪われました

 打ち合わせのあとに会食があるかもしれない。遅くなる可能性は大いにあるが、莉々子は今夜のうちにどうしても謝りたかった。

 時刻がゆっくりと刻まれていく。
 そうした中、考えるのはこれまでの自分の言動だった。金持ちというだけで、彼に対して辛辣な言葉ばかりを投げつけて、その度に否定する望月の言葉に耳も貸さなかった。元彼への恨みを望月で晴らそうしていたのも同然。

(私はなんて最低な女なんだろう……)

 思い返すほどに自分が醜く思える。
 莉々子が「はぁ」と深いため息を吐いたところで、マンションの前に黒い高級車が停車し、後部座席から望月が降り立った。


「望月社長」


 声を掛けた莉々子を見て、彼が目を見開く。


「莉々子? こんなところでなにをしてるんだ」
「……社長を待っていました」


 望月が目を細めて訝しげに首を捻る。
 彼の乗ってきたハイヤーが走り去ると、望月は「とにかく入れ」と莉々子をマンションの中へと誘導してくれた。

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