俺様社長に甘く奪われました
莉々子が負けずに言い返すと、望月の眉間に皺が寄る。
「……それじゃ聞くが、莉々子はなにをしにここへ来たんだ。傷つけてごめんなさい? 謝って気が済むのは自分だけだって気づけ。俺は同情されたいわけじゃない」
急に突き放すような態度を取る望月に、今度は莉々子が戸惑う。
「ち、違います。同情なんて……」
「じゃあなんだ」
鋭い視線を突き立てられ、莉々子は言葉にグッと詰まった。
ここへ来た第一の目的は謝罪のため。だが、その境遇に同情したからというわけではない。こんなところまで押しかけたのは……。
顔を上げ、ゆっくりと手を伸ばす。そして莉々子は、恐る恐る望月の身体に腕を回した。
「こうしたかったんです……」
莉々子が抱き締めたくらいで癒されるような過去ではない。でも、莉々子はそうしてあげたかった。つまり……。
「社長に会いたかったんです」