俺様社長に甘く奪われました
「……初めて、ですか?」
想像もしていなかったことを言われて、反射的に奏多を見る。すると彼は莉々子からそそくさと目を逸らした。
日本を代表する大手商社のグループ企業の代表をしている奏多には、これまでに何人もの恋人がいただろう。それも親に認められるような立派な相手が。それなのに初めて紹介したのが自分だったとは、莉々子が信じられない思いになるのも当然だ。
奏多はその話題から逃げるようにキッチンへと立った。
「しかも、こんなにかわいらしい人なんですもの。私が興奮してしまうのも許してね」
「かわいらしいだなんて……」
謙遜ではない。本当にそんなことはないのだと莉々子は小さくなる。
かわいらしいというのは、そのまま百合に返したい言葉だった。初めて顔を見た見合いの席でも莉々子は思ったが、奏多の母親ならとうに五十歳は過ぎているだろうに、肌の艶やハリは三十代でも通用してしまいそうだ。醸し出す雰囲気は柔らかく、物腰も穏やか。見合いの席で隣に座っていた威厳に溢れる東条とは対照的だった。
「正直に白状すると、源之助さんはまだ怒っているの」