俺様社長に甘く奪われました

 奏多の父、朝菱商事の代表取締役社長だ。
 そこまで言った百合がハッとしたように口を押さえる。


「……奏多、莉々子さんにはお話ししてあるの?」


 莉々子はなんのことかと思ったが、それがすぐに東条社長との血のつながりのことだとわかった。
 コーヒーを入れて戻った奏多が「莉々子は全部知ってる」と答えると、百合は「そう」と軽く息を吐いた。


「源之助さんは怒っていても、心配することはないわ。あ、そうだ、今度四人でお食事なんてどう? その場でもう一度きちんと莉々子さんを紹介したほうがいいわ。ね、そうしましょう」


 東条と会うなんてとんでもない。見合いの席で射抜かれた冷ややかな鋭い目を思い出して莉々子が震え上がる。


「あの、お母様、それはちょっと……」


 莉々子が遠慮気味にそう言うと、百合は「莉々子さん」と急に真顔になった。


「……はい」
「私のことはお母様じゃなくて、百合と呼んでもらってもいいかしら?」

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