俺様社長に甘く奪われました
それから十五年が経ち、東条は離婚。必死になって探し出した百合との間に自身の子供がいることを知って結婚を望んだものの、百合は頑なに拒絶した。それは百合なりのプライドだったのかもしれない。それでも後継ぎとして奏多をグループ会社の社長として育てることを了承したのは、それまでの十五年間がつらく苦しい毎日だったから。女手ひとつで育ててきた奏多に少しでも楽をさせてあげたいという親心なのだろう。
莉々子のことを歓迎したのは、百合にそんな過去があったからなのかもしれない。肩書きが邪魔をして、好きな人と結ばれなかった過去があったから。
順風満帆に生きてきたわけじゃないという奏多の言葉は、本当だったのだ。
「あ、そうだ。母さん、スペアキーを返してもらえる?」
百合は虚を突かれたような顔を一瞬してから、「そうね」と微笑み、ポケットからカードキーを取り出した。
(もしかしたら私のことを気づかってくれたの?)
ふたりのやり取りを見ている莉々子に百合が振り返る。
「莉々子さん、もしかしたらもう知ってるかもしれないけど、奏多は暗闇が苦手なの」
「余計なことを言うなよ」