俺様社長に甘く奪われました
莉々子が手渡されていたものをコピーして奏多へ渡す。
「ありがとう。キミは行かないのか? ……なにかあったのか?」
莉々子の変化に気づいた奏多が首を傾げながら近づく。
その顔を見て莉々子は涙腺が緩みそうになるのを必死に堪えた。
「……実は、発注していたはずの備品が私の不手際でキャンセルになってしまっていて」
「セレモニーで使うやつか?」
「はい……。それとそのあとのパーティーの料理も……」
唇を噛み締めて俯いていると、奏多は上田に「先に現地に向かってくれ」と振り向きざまに指示をする。
「え? ですが……」
「アビーの上層部たちが到着したら、そのお相手を上田さんに頼みたい。うちの取締役たちも向かう頃だろうから、彼らとの顔合わせの段取りをしてやってくれ。車は上田さんが乗っていってくれて構わない。俺は俺で手配するから」
最初は戸惑っていた上田も、奏多に指示をされて「承知いたしました」と総務部をあとにした。