俺様社長に甘く奪われました

 志乃の椅子に座った奏多が、莉々子の肩に手を添えて顔を覗き込むようにする。


「そんな顔をしていても始まらないだろう? 話を聞かせてくれ」
「……はい」


 ことの経緯を順序立てて話す。すると、さすがの奏多も困ったように腕を組んで考え込んでしまった。


「申し訳ありません。朝ソリの顔に泥を塗るような真似をしてしまいました……」
「まぁ待て。まだ手はある」


 奏多はそう言うと、胸元からスマホを取り出して立ち上がった。


「もしもし、俺だ。京介、ちょっと頼みたいことがあるんだ」


 京介、ル・シェルブルの副社長だ。見合いに乗り込んだあとにバイキングに連れていってもらった先で会ったが、彼になにを頼むつもりだろうか。
 疑問を抱いている莉々子に、電話中の奏多が振り向く。


「莉々子、必要な備品のリストはあるか?」
「え? あ、はい、あります……


 探った引き出しからクリアファイルを差し出す。

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