俺様社長に甘く奪われました

 そんなことを言われようが絶対に行かないと、莉々子は心の中で返す。
 両手をギュッと握り締めてその場を立ち去ろうとすると、振り返ったところに奏多が立っていた。


「相沢社長、うちの社員がなにか不手際でも……?」


 奏多に聞かれた祥真が「いいえ、不手際などということは全然。少し彼女とお話をさせていただいただけです」と紳士的に返す。


「そうですか……」


 奏多の視線が莉々子に向けられ、なんとなく目を逸らした。


「莉々子さーん!」


 松永がタイミング良く呼んでくれたおかげで、莉々子はその場でふたりに一礼して彼の元へと走った。

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