俺様社長に甘く奪われました
莉々子は笑顔が出なければ、そんな悪態も口から出せなかった。それどころか、唇が震えてしまう。
「あ、あの、私、仕事があるから……」
踵を返したところで、莉々子は彼に手を掴まれてしまった。
「待って」
祥真の声が耳を突く。
「莉々子と少し話がしたい」
ふと見やった彼の左手の薬指には、プラチナリングが銀色に輝いていた。彼は結婚したのだ。
「……私に話すことはないから」
「頼む」
懇願されたが、莉々子は首を横に振る。
「無理。今、仕事中なの」
「それじゃ今夜、【アストロ】で。ふたりでよく行ったバーだ。覚えてるよね?」
「……行かない」
「莉々子が来るまで待ってるよ」