俺様社長に甘く奪われました

「……どういうこと?」
「あのときはそう言って別れるしかなかったんだ。親の決めた相手との結婚が持ち上がってね」


 祥真はそう言って、ジントニックをひと思いに飲み干した。

 そういえば、アストロで飲むときの祥真はいつもそれだったことを莉々子は思い返した。莉々子がモスコミュールで、祥真はジントニック。いつもお決まりだったためバーテンダーにも覚えられて、ふたりが顔を揃えるときは注文をする前に出されたものだった。


「好きだけど別れようと言ったら、莉々子は納得できないだろう? それならば、それほど好きじゃなかったと言って、莉々子の気持ちが俺に残らないほうがいい。残酷な言葉で莉々子を傷つけて俺が悪者になったほうがいいって思ったんだ」
「なにそれ……」


 それは思いもしない祥真の告白だった。莉々子は胸が圧迫されたように苦しい。
 それじゃ、この三年間はなんだったの。最初からそれほど好きでもなかったと振られて、ずっと引きずってきたのに。


「……ずるいよ、祥真。自分ばかりいい人ぶって」
「いい人ぶったつもりはない」

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