俺様社長に甘く奪われました

(こんなときに限って困ったな。仕方ない、もう一度総務部へ戻ろう)


「社長、大変申し訳ありません。ちょっとボールペンを取って参ります」


 そう言って身を翻そうとしたところで、「これを使え」と望月がペンを突き出す。


「ですが……」
「足りないものがあるたびに、いちいち総務部へ戻っていたら日が暮れる」


 望月の言うとおりだと肩をすくませる。


「……ありがとうございます」


 恐れ多いものの、莉々子は望月からありがたく借りることにした。


「お日にちはいつでしょうか?」
「来週の火曜日」


 言われるままにメモを取ると、思いのほか書きやすいペンに驚く。莉々子が持っているどのボールペンよりも、ペン運びがスムーズなのだ。
 思わず望月に「このペン、書き心地がいいですね」と気安く話しかけてしまった。

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