俺様社長に甘く奪われました
◇◇◇
上田から『すぐに社長室へお越しください』と莉々子に内線が入ったのは、それからさらに十日が経った頃のことだった。
社長室へ入ると、奏多のほかに弁護士の田崎もソファに座っていた。莉々子が田崎に会うのは、これで三度目だ。
「こんにちは。いろいろとお世話になっております」
頭を下げ、奏多に促されて彼の隣に座る。
「例の示談が成立しましたので、そのご報告で参りました」
田崎が示談書と書かれた用紙を一部テーブルに置く。そこには莉々子と志乃の名前のほかにそれぞれの押印がされていた。
「被告人の鎌田志乃には故意による暴行が明らかでしたが、被害者である倉木さんの強い希望もあり、略式裁判による罰金刑となります」
田崎の報告に緊張して耳を傾けていた莉々子は、身体から力を抜いた。
(……懲役刑にならずに済んだんだ。よかった……)