俺様社長に甘く奪われました

「……だな。よし、飲み直そう」


 望月は気を取り直したように莉々子の手を強引に引き、再びソファへと座らせると、新しいグラスにシャンパンを注ぎ直した。


「ほら、飲め」


 それを莉々子へと差し出す。


「私、もう帰ろうかと思うのですが……」
「まぁそう言うな。もう少し付き合え。足りなければもう一本追加してもいい」
「これだけあれば十分です……!」


 一本十五万円のお酒をもう一本だなんてとんでもない。
 望月が莉々子の手を取りグラスを持たせる。


「さっきの話、悪気はなかったんだ。ごめん」
「もういいです。私もつい昔のことを思い出してしまっただけですから」


 勢いあまって、ついそんな話を持ち出したことを莉々子はすぐに後悔する。望月が当時のことを覚えていない確証はない。顔を覚えていなくとも、莉々子の話をきっかけとして、あの夜のことと彼女を結びつける可能性もある。できればそれは避けたい。恥ずかしいところを見せたうえ、成り行きで身体を重ねたのが自分だと気づいてほしくなかった。

< 46 / 326 >

この作品をシェア

pagetop