俺様社長に甘く奪われました
「昔のこと?」
望月が隣で身を乗り出すものだから、莉々子はどうしたものかと焦る。
「あ、いえ、大したことではないので……」
そう誤魔化すほかにない。ところが望月は「大したことがないのなら話せるだろ」と食い下がる。
「……単なる失恋話ですから」
そう言った瞬間、望月の瞳が頼りなく揺れた。それに構うことなく莉々子が続ける。
「それ以来、怖くて恋もできなくなって。その人がお金持ちでイケメンだったので、そういう人のことが苦手になってしまいました。……望月社長もそうですね」
そこまで言うつもりはなかったが、余計なことまで口からぽろっと零れる。いつになく舌が滑らかなのは、もしかしたらお酒のせいなのかもしれない。高級シャンパンで気持ちが大きくなったのだろう。望月を相手にしてそんなことを言ってしまうほど、莉々子は酔っていた。
「心外だな」
ボソッと呟いた望月は、涼しげな目を鋭くさせて莉々子を睨むようにしていた。
その視線の鋭さに、酔っているとはいえ莉々子は尻込みしてしまう。