俺様社長に甘く奪われました
思わぬ告白をされ、莉々子の思考回路が寸断される。
望月はそんな彼女をじっと見つめた。その瞳に切実な色を見た莉々子は戸惑う。
「どうして、なにも言わずに姿を消したんだ」
「……振られた直後にあんなこと……」
あの夜のことは、できることならすべて消してしまいたかった。振られたことも、望月に抱かれたことも。なにもかもをなかったことに。そうすればどれほど楽になれたことか。
こっぴどく振られた悲しい記憶と、その直後に勤め先の社長に抱かれた軽率な自分。そのどちらも、未だに莉々子の心にしっかりと爪痕を残している。
「俺はこうして莉々子を見つけることができてよかったと思ってる」
望月が莉々子の手を握る。
突然の展開に莉々子の頭は混乱していた。
(社長が、あの夜から私のことを? ……そんなことあり得ない)
望月の言葉をどうしたって鵜呑みにすることはできない。
もう恋はしない。そう決めて、この三年間を生きてきた。つらい思いは、もう二度としたくない。相手が社長であれば、未来はわかりきっていること。元彼と同じような結末が待っているに違いないから。
「……すみません、帰ります」
望月の手をやんわりと外し、莉々子が彼に一礼する。
「莉々子、待て」
望月の声に足を止める気はなかった。