俺様社長に甘く奪われました
それならばもう少し早く声を掛けてくれればいいのにと莉々子は不満を持ったものの、蛍光灯は予告して切れるわけではないから仕方ないだろうと思い直す。現場のことはちょっとしたフォローしかしていないが、蛍光灯の交換ならば外して新しいものをはめ込むだけだ。
「承知いたしました。すぐに伺います。……あの、ちなみに社長はいらっしゃるんでしょうか」
莉々子が恐る恐る尋ねると、なんでそんなことを聞くのかと思われたか、上田は少し間を空けてから『望月社長は出張中です』と答えた。
そういえば中国行きの航空券を手配したのは自分だと思い出す。
「そうなんですね。では、これから伺いますので」
莉々子はホッと胸を撫で下ろした。あんな話をしたあとでは、望月と顔を合わせづらい。
脚立と蛍光灯を抱え、社長室へと向かう。莉々子がエレベーターから降りると、内線をくれた上田がそこで待ち構えていた。
「申し訳ないのですが、私は用事があって帰りますので、あとはお願いしてもいいですか? 秘書室の人間はもうすでに退勤しているんです」