クールな部長は溺甘旦那様!?
数十分後。

鏡の前の私はまるで別人を見ているかのようだった。

「お客様、とてもお綺麗ですよ」

そんなふうに言う店員さんの声も遠くに聞こえるほど、私は呆然と鏡の前で立ち尽くしていた。さきほどの紺色のドレスをもう一度試着しているわけではない。私が今、着ているのは、あろうことか店に入るときに魅入ってしまったあの店頭のウェディングドレスだったのだ。

わ、私じゃないみたい……!

ほどよくレースがあしらわれていて、スレンダーラインのシュルエットが綺麗に演出されている。控えめなボリュームのスカートで、狭い試着室でも窮屈な感じはしなかった。ここで予想外にウェディングドレスを着せられて、露出する予定のなかった肩やデコルテがむき出しになり外気に触れると心もとない。

「ふぅん、馬子にも衣装だな」

「剣持部長!?」

すっと鏡に映った剣持部長の姿にハッとなる。店員さんも気をきかせてその場を離れていった。
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