クールな部長は溺甘旦那様!?
剣持部長の背後には、今夜も綺麗に街の夜景が広がり瞬いていた。その時。

彼がキーボードに指を滑らせていると、そのタイピングの音を遮るように剣持部長のスマホが突然鳴った。その電話に集中力を削がれ仕方なしに鞄から取り出すと、画面を見た剣持部長の目がすっと細められた。

「悪い、ちょっと電話してくる。影山からだ」

時刻は二十三時。

こんな時間に電話をかけてくるなんて、よほど急ぎの用件なのだろう。剣持部長は着信を取りながら自室へ向かい、すぐに戻る。と目で合図してドアを閉めた。

なんとなく嫌な予感を抱きつつ、コーヒーを注いだカップにミルクを淹れてかき混ぜていると……。

「なんだって? おい、なぜそれを今頃になって言うんだ!?」

一際大きな剣持部長の声がリビングにまで聞こえて、私は思わずコーヒーをかき混ぜる手を止めた。いつも冷静沈着なのに声を荒げるなんて彼らしくない。一気に緊迫した空気が部屋に漂い始める。私に聞こえてしまったと思ったのか、それ以降はボソボソとした会話が所々聞こえてきて、一体何を話しているのか気になってそわそわしてしまう。そしてしばらくすると静かにドアが開き、剣持部長がげんなりした表情で部屋から出てきた。

「あ、あの……」
< 282 / 362 >

この作品をシェア

pagetop