クールな部長は溺甘旦那様!?
握る剣持部長の手があまりにも温かくて、夢で重ねたのは剣持部長の手だったのかもしれないと思うと、身体が解けるように安堵した。すると、徐々に目頭が熱くなってきて、今まで堪えていたすべてのものが涙とともに溢れていった。

「本当によかった、採用されて……もう、嬉しくて」

「君は大げさだな、失敗はしないといっただろう?」

“だから泣くな”と剣持部長がそっと親指の腹で私の涙を拭う。

「だって、私たち結婚してから……初めての共同作業はケーキカットじゃなくて……コンペだったじゃないですか……それが成功したんだから大げさでもなんでも……嬉しいです」

嗚咽交じりに泣きじゃくる私を、剣持部長はふわりと抱きしめてくれた。そして、暖かくてこの上ない優しい熱に包まれる。

「早くうちに帰って来い。君がいない部屋はなんだか寒くて暗い……今までずっとひとりだったのに、こんなことを思うなんて変だな。けど、ようやくわかったんだ……これが愛おしいってことなんだと」

「え……?」

剣持部長が抱きしめる身体をほんの少し離す。そしてやんわりと目を細めると、私の頬を何度も撫でた。
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