クールな部長は溺甘旦那様!?
「ほら、莉奈、ちゃんと口開けて」

「もう、子供じゃないんだからひとりで食べられますって」

最終検査を三日後に控え、それで問題なければすぐにでも退院できるくらい回復したというのに、剣持部長はまだ過保護に怪我人扱いする。夕食に出た冷ややっこをスプーンで掬い、それを差し出しながら、彼は“ちゃんと食べろ”と目で訴えてくる。けれど、私にとって病院食は味気なくていい加減飽き飽きしていた。

「退院したら、とんかつにてんぷらにステーキとか食べたいです」

「まったく、脂っこいものばかりだな……」

「食欲があるのは健康な証拠です」

そういうと、剣持部長はクスリと笑った。

あぁ、この笑顔ほんと好き。幸せだなぁ……。

時刻はもうすぐで面会時間終了の二十時になろうとしている。このあたりになると、名残惜しくていつも時間が止まればいいのにと思ってしまう。

めでたくメフィーアの契約も正式に決まり、私が欠勤している間、剣持部長には迷惑をかけっぱなしだ。早く退院してまた一緒に仕事がしたい。
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