クールな部長は溺甘旦那様!?
私と付き合っている時に、他の女性と二股をかけられていたかどうかはわからない。私と別れた後に付き合った可能性だってある。悶々とそんなことを考えるけれど、もう全てはいまさらなのだ。表現し難い感情を振り切り、私はエントランスにあるポストに鍵を入れて外に出た。

そしてもう二度と来ることはないだろうこのマンションに別れを告げ、鼻をつまんでツンと染みるような感覚を潰す。よし! と気を取り直して歩き出そうとしたその時だった。バッグが細かく振動して誰かからの着信に気づく。

まさか慎一からじゃ、と思ってスマホを取り出してみると、そこに表示されていた電話の相手は、意外にも剣持部長からだった。

「もしもし? 剣持部長?」

『今、どこにいる?』

剣持部長から電話なんて珍しい。というより初めてだ。落ち着きのある低い声だったけれど、なんとなく疲れているような、そんな感じが声から窺える。
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