クールな部長は溺甘旦那様!?
「私、慎一君の彼女になってもいいの? 二番目でもよかったんだよ?」

「もう七海は僕の一番だよ……」

ドアの向こうからそんな会話が聞こえた。自分のやっていることは明らかに盗聴だ。意図として会話を聞こうとした。私は馬鹿だ。こんな会話、聞かなければよかったのに、慎一が私と別れたかった本当の理由がわかってしまった。指先も唇も足も細かく震えているのがわかる。

けれど、不思議と涙だけは出なかった。

帰ろう……もう、マグカップなんてどうでもいいよ。

私はその場を離れ、もつれそうになる足で階段を降りた。慎一と別れた時は虚無感でいっぱいだったけれど、今はなんというか何もかもが馬鹿らしく思えて仕方が無かった。
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