軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
 
***

男らしい体面を保ちたい軍人気質のアドルフとしては、十歳も年下の、しかも幼過ぎる外見を持つ妻にうぶな恋をしていると周知されるのは恥以外の何者でもないが、宮廷官達としては喜ばしい話だ。

青臭かろうと純愛だろうと、皇帝夫妻の仲が良いことに変わりはない。夫婦仲が良ければ子宝にも恵まれやすいし、夫が妻ひとすじで愛人を作らなければ庶子問題に悩まされることもないのだから。

アドルフとシーラの結婚式まであと四ヵ月。当初はシーラがあまりにも無垢で無知なことに不安の声も囁かれていたメア宮殿も、今は宮廷官のほとんどが結婚式と彼女の戴冠式を心待ちにしている。

しかし、そんな平穏で温かな雰囲気の中、険しい表情で緊張感を漲らせている者がいた。

「――それは本当なのですか」

「ええ、間違いありません。ポワニャールまで諜報員を飛ばし徹底的に調べさせました。アレは――マシューズ公爵の手の者です」

ひとけのない東棟の一室。声を潜めて話すのは皇帝近侍侍従武官長のテオドールと、同じく皇帝近侍の侍従長、ヨハンだ。

ふたりの眉間には深い皺が刻まれ、閉め切った部屋には重々しい雰囲気が漂っている。

「それで、彼の身柄は?」

「今は泳がせてあります。けれど、次にシーラ様と接触する前に確保した方が良いでしょう」

「分かりました。それは私に任せてください。ヨハン殿は急ぎ陛下にご報告を」

ふたりは確かめ合うように頷くと部屋を出て、それぞれ別方向へと足を進めていった。
 
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