軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
しかし――と考えて、ボドワンは再び神妙な顔になる。
「マシューズ公爵の話が嘘だと言うのなら……帝国は同君連合が目的じゃないのですよね? じゃあ、講和条約の中身って……?」
シーラの持つ王位を欲している訳でなければ、なぜワールベークとフェイリンはシーラを巡って争っているのか。講和条約の本当の条件とはなんだったのか気になってボドワンは問いかけた。
「確かアドルフ陛下は、シーラ様との間に生まれた長子をワールベークの皇位継承者に、次子をフェイリン王国の王位継承者にすると仰られていました。その子が王位につくまでは、フェイリン王国は国会優位の立憲君主制を保てばよいと」
フェイリン王国は元々立憲君主制だ。ただしカーティスが王位についてからは非常に国王の権力が強く、絶対君主制に近い状態にあったが。
アドルフはフェイリンの王権を奪うつもりもないが、シーラにフェイリンの国政の舵を取らせるつもりもなかったらしい。それもそうだろう、国政どころか王宮にさえ馴染みのなかった少女を政治に担ぎ出しても、いいように操られるのが関の山だ。
シーラの王位はフェイリンの象徴として残しておき、国政は議会が運営する。そして将来ふたりの子が王位についたら、時代に合わせその体制を変化させれば良いと考えたのだ。
ボドワンは首を捻る。それはフェイリン王国にとって決して悪い条件ではない。デメリットとしては、シーラが皇妃としてワールベークに腰を据えることで、フェイリン国内に王が常駐しない状態になることぐらいだ。
しかし同君連合や傀儡政権にはよくある話だし、シーラが政務をする訳ではないので、特に問題はないだろう。
ならばどうしてマシューズ達は躍起になって政略結婚を阻止しようとし、シーラをフェイリン王国へ連れ戻したかったのだろうか。
「……マシューズ公爵とノーランド卿は……確か第二政党の執政……そうか!」
そこまで考えて、ようやくボドワンはマシューズ達の企みが全て読めた。
「マシューズ閣下はシーラ様の摂政になって王権を拡大し、自分の意のままに国政を牛耳ろうとしているんだ!」
昼間、シーラが執政達との会談に引っ張り出され無知をさらされたと怒っていたことを思い出した。あれは未熟なシーラには摂政が必要であるという布石だったのだ。