軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
 
言っている意味が分からず不思議そうな顔をしているシーラに、ボドワンは肩を掴んで力説する。

「第二政党であるマシューズ達はこのまま象徴君主制になるより、王権を拡大しシーラ様の摂政になる方が自分達の意のままに国を操れると考えているんです。摂政には王家か親類縁者しかなれませんから、マシューズ公爵はうってつけという訳なんです」

己が欲のためシーラの王位を利用しようとしているのは、マシューズ達の方だったのだ。

それを知っていたアドルフが彼らを蔑み嫌悪し、頑なにシーラに近づかせなかったことも納得である。

そのときだった。パチパチパチと大げさに手を叩く音が聞こえて、シーラとボドワンは驚いて振り返る。

「ボドワン、お前がそんなに賢いとは予想外だったよ。いやはや、私の失策だ。お前はもっと素直で愚鈍な男かと思っていたが、まさか私を疑いシーラ様を無断でこんな所まで連れ出すとはな。少々見くびっていたようだ」

醜悪な笑みを浮かべて部屋に入ってきたのは、マシューズとノーランドだった。しかもノーランドは拳銃を手に、銃口をこちらへ向けている。

ボドワンは咄嗟にシーラを背に庇ったが、それを見てノーランドがおかしそうに口角を上げた。

「いや、やはり君は愚かだ。この銃がシーラ様を狙うはずがないだろう。彼女には我々の傀儡になってもらうという重要な役目があるのだから。庇っても意味はない。この銃が処刑するのは、国家機密の講和条約の中身をベラベラと喋ったはしためと、傀儡となる女王に余計な知恵を与える蛇だ」

次の瞬間、部屋に銃声が鳴り響き、ベティの背に銃弾が撃ち込まれた。

何が起きたのか理解する間もなく血に染まり倒れたベティを見て、シーラが悲鳴をあげた。

「おや、驚かせてしまいましたかな。これは失礼。けれどもう一発撃たねばなりませんので、どうぞシーラ様はこちらへ避難されてください」

まるで優雅な挨拶でもするような口調で、ノーランドは銃に新しい弾を込めながら言う。

「まあ、間近でお友達が銃弾に倒れるのを見て、クラーラ様のようにお心を壊されるのも良いでしょう。そうすれば、あなたの食事に水銀を混ぜる手間が省けますから」

ボドワンはゾッと背筋を冷たくしながら、彼らがどうやってシーラをフェイリン王国に長く留め、最終的に傀儡の王にさせようとしていたか理解した。
 
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