軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
 
「――愛しています、アドルフ様。あなたに出会えてよかった。私は、強いあなたに相応しい皇妃になります。誰よりも強く優しいあなたのように、立派な皇妃になってみせます」

いじらしく、けれども凛と誇り高く誓って見せたシーラに、アドルフはしばし見惚れた。

素朴で無垢だが不躾で野暮ったい野鳥のようだった少女が、こんなにも気高く洗練され、人を魅いる皇妃に育つなどと誰が予想しただろうか。

「……充分だ」

「え?」

アドルフの呟いた声を拾えずシーラが聞き返すと、涙を拭ってくれていた手が頬を柔らかに包んだ。

「お前は俺に相応しい。……いや、俺の妻にはお前しかいない。お前しか――」

――いらない。そう続いた言葉は、唇と共に重なった。

自分より少しだけ硬く温かな唇の感触、間近で見る彼の美しい顔、頬をすっぽりと包んでしまう大きな手。そのどれもが、シーラの胸を苦しいほどのときめきと幸福で満たす。

(アドルフ様、好き……)

彼と時間を紡ぐたび、この想いは大きくなっていく。こんな喜びは他にはない。シーラはアドルフへの恋を自覚するたび、生まれてきてよかったとさえ思えた。

重なった唇は角度を変え、互いの感触を楽しむように動く。そして、まるで自然な流れのようにアドルフの舌がシーラの口の中へと入ってきた。

「ん……、ふ、ん……」

アドルフの舌はシーラの口腔を満遍なくねぶっていく。頬の内側や口蓋、唇の裏側まで。そして小さな舌を見つけると、自分の舌を押しつけて絡ませた。

口腔を支配される感覚に、ゾクゾクと全身が震える。身体中の神経が目覚めさせられるような痺れが走り、不思議な悦楽に満たされていく。

息が苦しいのに、キスをやめたくない。もっともっとアドルフを感じたくて、手が勝手に彼の腕を掴んだ。
 
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