軍人皇帝の幼妻育成~貴方色に染められて~
 
「カーティス様の戴冠式が済み国政が安定したらすぐお迎えに上がるはずだったのですが、なにせ今は戦乱の世ですから。内乱に領土争い、大戦と国内外問わず次から次へと問題が起こりまして……。苦渋の末クラーラ様は、シーラ様を教会に隔離して育てられた方がよいとご決断されたのです」

「そう……だったの……」

呟きながら、シーラの胸には熱いものが込み上げていた。母と兄がとても苦労していたことも、そんな大変な中、娘を守るために母が苦渋の決断をしていたことも、シーラを初めての感情でいっぱいにする。

(会いたい……、お母様にもお兄様にも。きっとお母様も私に会いたがっているはずだわ。会って、お顔を見せてあげたい。成長した私を見せてあげたい……!)

今まで湧くことがなかった、母を想う気持ち。家族への愛情や郷愁の念が、シーラの心に芽生え大きく枝葉を伸ばす。

「ねえ、それでお母様は? 今はどうしていらっしゃるの?」

母は健勝なのだろうか。存命だとは聞いているけれど、細かいことまでは誰も教えてくれなかった。シーラは急き立てるように尋ねる。

するとボドワンは少しだけ言いづらそうに眉根を寄せた。

「実は……帝国との大戦後、クラーラ様はお身体の調子を崩し床に臥せられていまして……」

その言葉を聞いてシーラはとても悲しくなると共に、どうしてメア宮殿の者が真実を教えてくれなかったのか納得がいった。

大戦に負けるということは、国家衰退の危機ともいえる。摂生であるクラーラの心労は計り知れない。

きっとメア宮殿の者達は、シーラの母が帝国との大戦のせいで床に臥せってしまったことに、少なからず罪悪感を抱いたのだろう。シーラが帝国を憎むようになっては、ここでの暮らしに馴染めなくなってしまう。そう思い、気遣って黙ってくれていたに違いない。

帝国での生活にも馴れ、アドルフを愛するようになり、様々なことを理解できるようになってきた今ならば、真実を知ったところで帝国を憎むことはない。

けれど、母を恋しく思い会いたい気持ちはますます募った。
 
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